3Dプリンタの精度とは…
一般的に精度とは、何かを測定や計算をした際に発生したバラツキの大きさ、と言われています。3Dプリンタの場合には、元データとなる設計図と比較して、完成した造形物の寸法の誤差が、どの程度あるか、ということになります。当然、精度が高い方が使用できるシーンが多くなります。
加工機と比較すると
旋盤や切削加工機を使用する場合には、数ミクロンの誤差で加工することもできます。しかし、3Dプリンタの造形物は、造形方式によって異なりますが良くても数十ミクロン、形状によっては数百ミクロンのレベルで、比較すると精度はどうしても劣ってしまいます。
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機械加工
手間は掛かるが、精度よく加工できる
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3Dプリンタ
ある程度の精度で、素早く試作できる
歴史的な背景
3Dプリンタは元々、商品設計の過程で必要となる試作品を作るために開発されました。そのため、精度だけを追求するのではなく、スピードや使い勝手とのバランスがとられています。必要なタイミングに、できるだけ早く試作品を作れることが、優先されていると言えます。
精度を決める5 つの要素
3Dプリンタの精度を決定する要因としては、大きく5つの要素に分類できます。仕様表からは読み取れない項目もあるために、造形してみないとわからないことも度々です。そのため、3Dプリンタを導入する際には、実際に造形をしてみることが重要です。
精度を決める5つの要素
1.Z方向の1積層ピッチ
もし3Dプリンタに精度を求めるなら、まず初めに確認するべきは積層ピッチになります。より細かく積層することで、Z 方向の精度を高めることが可能です。積層ピッチは数十μmから数百μmまでと、造形方式によって幅があります。
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積層ピッチが大きい
測定する場所によって寸法がバラバラに
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積層ピッチが小さい
測定する場所を問わず精度が出やすい
2.X-Y方向の解像度
3Dプリンタは積層ピッチだけに注目しがちですが、X-Y 方向の解像度も要素の1つです。こちらは造形方式によって、表現の方法が異なりDP(I Dots per inch)やmmで記載されています。
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DPIが小さい
測定する場所によって寸法がバラバラに
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DPIが大きい
測定する場所を問わず精度が出やすい
3.造形中の反り返り
3Dプリンタは積層の過程で、材料に熱が加わってしまいます。特に高温になる造形方式の場合には、大きな温度差ができるので冷えるタイミングで反りが出てしまいます。形状によっては、反り返りが精度にもっとも影響を与えます。
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造形温度が高い
温度差が大きく反りの原因に
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造形温度が低い
温度差が小さいと反りが少ない
4.サポート材の取り残し
せっかく造形完了時に精度が出ていたとしても、サポート材が表面に残っていたら狙った寸法から誤差が生じてしまいます。造形物の精度を高めるためには、表面に残ったサポート材まで、完全に落とす必要があります。
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サポート材が残っている
サポート材の分だけ寸法が大きくなる
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サポート材が残っていない
狙った寸法で造形できる
5.造形後の変形
吸水要因
比較的精度の高い造形方式のほとんどは、UV 硬化樹脂を使用しています。そのUV 硬化樹脂は、吸水によって樹脂が膨潤してしまう傾向がありました。選定の際には、時間の経過と共に、変形しないかを確認が必要です。
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吸水率が高い材料
水分を吸って膨潤して変形する
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吸水率が低い材料
膨潤が少なく変形しにくい
温度要因
造形後の変形は、温度が要因になるケースもあります。特に薄い造形物を夏場の休日に放置してしまうと、力が加わっている方向に変形してしまいます。形状を維持できる、耐熱性が材料に求められます。
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熱に弱い材料
肉厚が薄いと変形してしまう
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熱に強い材料
形状を維持できる